(資料)

声明 日朝国交交渉の再開を支持する

 われわれは日本と朝鮮民主主義人民共和国との国交を願ってきた立場から、このたびの日朝首脳会談において「日朝間の不幸な過去を清算し、懸案事項を解決し」て、国交を樹立することが「双方の基本利益に合致するとともに、地域の平和と安定に大きく寄与するものとなる」との共通認識が確認されて、国交正常化の早期実現に向け、本年10月中の交渉再開をうたった「日朝平壌宣言」が出されたことを歓迎し、強く支持する。

 しかしながら、朝鮮民主主義人民共和国が拉致問題について発表した内容は、われわれに強い衝撃を与えた。13人の拉致の事実は不当な国家犯罪であり、うち8人が死亡しているということに一層の驚きを禁じ得ない。われわれはこれに強く抗議するものである。ご家族の心情は察するにあまりある。このたび生存者五人が一時帰国されることになったが、朝鮮民主主義人民共和国政府は拉致と死についての真実を一層明らかにし、遺骨の捜索と引き渡しを行い、辛光洙ら実行犯の処分を行うべきである。

 日朝国交交渉には二つの内容が含まれる。第一は日本の朝鮮植民地支配の清算である。このたびの「日朝平壌宣言」で「日本側は、過去の植民地支配によって、朝鮮の人々に多大の損害と苦痛を与えたという歴史の事実を謙虚に受け止め、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明した」と明記された。「お詫び」は朝鮮語では「謝罪」と訳されている。この謝罪をうけて清算をどうおこなうかについては、小泉首相が「補償」をおこなうということは受け入れられないと述べ、財産と請求権を相互に放棄した上で経済協力を実施する方式を主張した。これを金正日国防委員会委員長が「日本側の方式に従う」と表明して、受け入れ、合意が成立した。過去の植民地支配がもたらした苦痛と損害を念頭に置きながら、新しい心で誠実に経済協力を進めることが必要である。
 この第一の課題に関連して、在日朝鮮人の地位の問題と文化財の返還問題について協議されると確認されたことは重要である。真剣な交渉がのぞまれる。

 国交交渉の課題の第二は、1945年から、とくに1950年の朝鮮戦争から今日までつづいた不正常な、敵対的関係に終止符をうち、正常な国家間の関係に入ることを確認し、その間に発生した諸問題の解決をはかることである。このたびの「平壌宣言」では、「双方は、国際法を遵守し、互いの安全を脅かす行動をとらないことを確認した」。
 拉致問題と工作船問題については、朝鮮民主主義人民共和国側は、「日朝が不正常な関係にある中で生じたこのような遺憾な問題が今後再び生じることがないように適切な措置をとることを確認した」。われわれはこの合意を注視し、北朝鮮側が誠意ある対応をするよう要望する。

 この点と関連して、地域の安全保障問題、協力関係を念頭におきながら、両国間で安全保障にかかわる問題について協議することにしたことは重要な合意である。

 このたびの小泉首相の決断は賞賛に値する。小泉首相は、北朝鮮側が拉致問題の解決に適切な答を出し、安全保障上の諸懸案に誠意をもって取り組むなら、村山談話の精神での反省とお詫び、そして経済協力という線で国交交渉は妥結できるし、そうする意志があると小泉首相が示した。このことが、北朝鮮側の変化をよび出し、これまでの行き詰まり状況を破ったのである。国交交渉を再開して、拉致問題の解明をさらに求めていくという政府の方針をわれわれは支持する。

 日朝国交正常化交渉の過程で、関係諸国、とくにアメリカ、韓国と緊密に協議することは不可欠であるが、われわれはその際日朝国交正常化を通じて日本の安全のみならず、東北アジア地域の平和と繁栄をはかるために、日本政府が積極的に行動し、貢献するように希望する。同時に、核問題、ミサイル問題を含む安全保障上の諸問題やその他の諸問題に関する国際社会の懸念に対し、朝鮮民主主義人民共和国側がいっそうの決断をもって対応するように要望する。

 日朝国交樹立と日本の対北朝鮮経済協力がなされ、北朝鮮の開放と「改建」を助けるならば、朝鮮半島南北の協力とあいまって、東北アジアの平和協力の土台が築かれるのであり、それはわれわれの地域のすべての国、すべての人々の利益となるであろう。

   2002年10月15日

 日朝国交促進国民協会
   会 長 村山 富市
   副会長
     明石  康
     隅谷三喜男
     三木 睦子

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