米英のイラク戦争がはじまり、日本政府はその戦争を支持しました。とくに米国を支持する重要な論拠として、北朝鮮問題を指摘する意見がしきりにあげられています。北朝鮮をめぐる危機が進めば、日本は米軍に守ってもらうことが必要になるからというのです。 日本に住むわれわれは、韓国の国民とともに、イラクでの悲劇がわれわれの地域でくりかえされることを認めることはできません。北朝鮮をめぐる危機が破局に向かうことをどうしても回避しなければなりません。それはわれわれの地域のすべての人間にとって破滅的な事態です。 もとより米国政府は公式的には北朝鮮の核問題については外交的努力で解決するとしています。しかし、イラク戦争を推進した米国政府内部の有力な勢力の考えからすれば、「悪の枢軸」の一員である金正日政権を打倒することは望ましいことであり、正義であるのです。 この国においても、過去数ヶ月、北朝鮮に対する一方的なネガティヴ・キャンペーンが行われていました。テレビは毎日のように朝から晩まで北朝鮮はこんなにひどい国だという脱北者の証言ばかりを報道しました。そういう中で拉致問題の解決のためには金正日政権を打倒することが必要だと主張する人々が現れ、経済制裁の即時実施をもとめる動きもありました。アメリカの軍事行動を歓迎する気分が日本の一部にもあるのです。 ですから、いま、われわれはいっそうはっきりと、われわれの地域でこのような戦争をおこしてはならないという立場を確立し、明示しなければなりません。小泉首相はアメリカのイラク戦争を支持した3月20日の会見で、「日本に対してもいつ脅威がふりかかるか分からない」と述べ、アメリカの日本防衛の約束が抑止力となっていると述べましたが、北朝鮮との関係については、「日朝平壌宣言の精神を尊重し、誠実に実行に移し、不正常な関係を友好関係に変える」という決意を表明しました。もしも日朝正常化のための交渉を求めるのが日本政府の立場であるのなら、決裂してしまった日朝国交交渉をただちに再開しなければなりません。拉致被害者5人の子供たちを引き渡せということを交渉の前提にするのではなく、交渉を再開した中で、拉致問題と核問題、経済協力問題を一緒に話し合っていくことにすべきです。われわれは日朝国交交渉の無条件再開をもとめるものです。 北朝鮮が核開発計画をもって瀬戸際外交を進めており、アメリカが直接対話を拒んでいる危険な状況の中で、平壌宣言をよりどころにして北朝鮮を説得する外交を行えるのは日本だけです。韓国、日本、北朝鮮が戦場になり、三か国の人々が犠牲になり、アメリカ人兵士も戦死するような事態が万が一にも起こらないようにするためには、日本が北朝鮮と話し合いを進めることがどうしても必要です。 北朝鮮の核瀬戸際外交は本当にあぶないものだとわれわれは考えます。ブッシュ政権に対して、1993,94年に行った瀬戸際外交をくりかえして、北朝鮮は何を得るつもりなのでしょうか。北朝鮮は核兵器開発の計画を放棄しなければなりません。それは南北非核化宣言に反し、米朝枠組み合意に反し、日朝平壌宣言にも反しています。北朝鮮が自国の安全保障をえようと真に思うなら、東北アジア地域での平和、非核化の多国間取り決めを求める他はありません。 その方向性は日朝平壌宣言に含まれています。このイラク戦争の中で、日本は自分たちが平和を求めていることを日朝国交交渉の再開という行為によって示すことができると考えます。 2003年4月9日 |
署名者 (*印は第一次署名者) 浅野健一(同志社大学教員) 安達クニ子(東京日朝女性のつどい代表) 荒井献(聖書学者) 荒井信一(歴史家) 新崎盛暉(沖縄平和市民連絡会共同代表) 新屋英子(俳優) 李 順愛 (富山国際大学助教授)* 飯沼二郎(京都大学名誉教授) 五十嵐武士(東京大学教授) 石川真澄(ジャーナリスト) 石坂 啓(漫画家) 石坂浩一 (立教大学講師)* 石田 雄(政治学研究者) 磯崎典世(学習院大学教員) 今津 弘(ジャーナリスト) 岩本正光(日朝協会事務局長) 上野千鶴子(東京大学教授) 魚住 昭(ジャーナリスト) 宇沢弘文(経済学者) 内田雅敏(弁護士) 内海愛子(恵泉女学園教授) 梅林宏道(ピースデポ代表) 海野福寿(明治大学名誉教授) 永 六輔(作家) 江口圭一(愛知大学名誉教授) 江原 護(都市問題研究所) 遠藤洋一(福生市市会議員) 岡部伊都子(随筆家) 小川ルミ子(I女性会議事務局長) 小田 実(作家) 大沢真一郎(京都精華大学教授) 大槻和子(西東京市市民) 梶村真澄(横浜国立大学講師) 加藤周一 (評論家)* 加藤 節(成蹊大学教授) 加納実紀代(敬和学園大学特任教授) 我部政明(琉球大学教授) 鎌田 慧(ルポライター) 河 明生(企業者史家) 姜 尚中(東京大学教授)* 姜 在彦(花園大学客員教授) 姜 徳相(滋賀県立大学名誉教授) 木下順二(劇作家) 金 敬得(弁護士) 金 時鐘(詩人) 金 石範(作家) 櫛渕万里(ピースボート共同代表)* 国弘正雄(エジンバラ大学特任客員教授) 栗原 彬(政治社会学者) 小中陽太郎(中部大学教授)* 駒込 武(京都大学教員) 小森陽一(東京大学教授) 斉藤貴男(ジャーナリスト) 佐高 信(評論家) 重藤 都(杉並区民) 清水澄子(前参議院議員) 東海林勤(牧師) 白柳誠一(カトリック枢機卿) 辛 淑玉(人材育成コンサルタント) 新藤 允(日朝国交正常化を求める市民連絡会議) 末本雛子(日朝友好促進京都婦人会議) 鈴木佑司(法政大学教授) 曽我昭子(東京日朝女性の集い) 高崎宗司(津田塾大学教授)* 高野 孟(インサイダー編集長) 滝沢秀樹(大阪商業大学教授) 田中 宏(龍谷大学教授) 鄭 甲寿(ワンコリアフェスティバル実行委員長) 津和慶子(I女性会議議長) 都 相太(NPO法人三千里鉄道理事長) 仲尾 宏(京都造形芸術大学名誉教授) 中塚 明(奈良女子大学名誉教授) 中村政則(歴史家) 中村輝子(立正大学客員教授) 中山弘正(明治学院大学教授) なだいなだ(自由人) 朴 一(大阪市立大学教授) 原 寿雄(ジャーナリスト) 飛田雄一(神戸学生青年センター館長) 比屋根照夫(琉球大学教授) 深水信勝(カトリック神父) 三木睦子 (全国発明婦人協会会長)* 水野直樹 (京都大学教授)* 村井吉敬(上智大学教授) 文 京洙 (立命館大学教授)* 前田哲男(東京国際大学教授) 森 善宣(佐賀大学助教授) 矢沢康祐(専修大学名誉教授) 山口二郎(北海道大学教授) 山口啓二(歴史研究者) 山田昭次(立教大学名誉教授) 山室信一(京都大学教授) 山室英男 (評論家)* 矢向代史子(日朝友好促進京都婦人会議) 梁 石日(作家) 尹 健次(神奈川大学教員) 吉川勇一(市民の意見30の会) 吉田博徳(日朝協会代表理事) 吉田康彦(大阪経済法科大学教授) 李仁夏(在日大韓基督協会川崎教会名誉牧師) 李 進煕(和光大学名誉教授) 李 恢成(作家) 和田春樹(歴史家)* 以上 103人 京都の末本雛子さんがメール等でよびかけたところ支持して下さった方々 田中俊明(滋賀県立大学助教授) 上田 遙(日本語講師 スタンフォード日本研究センター所属) 平野慶次(関西市民の会代表) 奥西一夫(京都大学名誉教授) 上出隆一(朝鮮史勉強会) 大橋さゆり(弁護士) 大畑京子(長岡京市会議員) 有田 守(社会保険士) 堀田義太郎(大学院生) 曽我千代子(加茂町議会議員) 木原ゆり子(木原記念横浜生命科学振興財団理事) 八木晃介(花園大学人権教育研究センター所長) 野島英司 高野秀男(新潟県平和運動センター事務局長) いき一郎(元沖縄大学教員) 「 敬隆(高崎経済大学講師) 鄭 光敏(名古屋大学大学院生) 白井美喜子(I女性会議京都府本部) 宣保幸男(沖縄県高等学校障害児学校退職教職員会会長) 金 洪仙(日本語講師) 藤井悦子(米軍基地の撤去を求める京都の会) 丸本信之(宮崎県延岡家畜保健衛生所主任技師) 寺下浩徳(立命館大学学生) 西垣定治郎(静岡大学元教員) 島田多喜子(石川県農業短期大学) 藪内邦雄(自然農園) 富山一郎(大阪大学助教授) 府上征三(日本基督教団洛陽協会牧師) 小倉襄二(同志社大学名誉教授) 石川光庸(京都大学教授) 石川フランケ サスキア(甲南大学講師) 本田克巳(朝鮮の自主的平和統一を支持する京都委員会事務局長) 木田マス子(主婦、京都市) 百々野環(学生) 川端 諭(日本キリスト教団堅田教会牧師) 35人 京都大学朝鮮問題研究会 京都大学政治経済研究会 京都大学女性問題研究会 3団体 |