東北アジアの平和を求める日韓市民共同声明





 イラクに対する「衝撃と畏怖」の軍事作戦は、世界を震撼させました。この戦争の大義名分であった大量破壊兵器はいまだ発見されていません。この意味で、米英の対イラク戦争は国際法をないがしろにする戦争でした。しかも、アメリカの劣化ウラン弾やクラスター爆弾などが大量に使用された結果、多数のイラク市民が犠牲になり、犠牲者の数はいまも増えつづけています。これは世界の市民のコンセンサスに反する戦争でした。この甚大な犠牲は、この戦争を支持したすべての政府と国民に重くのしかかっています。
 私たち、韓国人と日本人は、このような戦争、このような悲劇が東北アジアにおいてくりかえされることを認めることはできません。北朝鮮をめぐる危機が破局に向かうことはどうしても阻止しなければならないと考えます。
 そのためには、私たちは、北朝鮮が核兵器の開発をはっきりとやめることが必要だと考えます。それと同時にアメリカが北朝鮮に対して核の先制攻撃を含め、武力行使をしないと表明することが必要です。東北アジア関係6カ国が加わる平和非核の協議のなかで、このような米朝の合意をつつみこんだ6カ国合意が達成されることがのぞまれます。
 私たちはアメリカ政府が、韓国、日本の政府と歩調を合わせて、北朝鮮に対処し、最後まで平和的な手段で、目的を達成するために努力するように希望します。軍事的手段は使いうるオプションにはなりません。地政学的に東北アジアの中心に位置する韓国と北朝鮮、そして日本が戦場になる戦争では、数多くの韓国朝鮮人、日本人とアメリカ人青年たちが死んでいきます。
 私たちは、日本政府がこの事態に重大な責任を負っていると考えます。日本政府は、核危機の克服のためにも、また、日本の植民地支配の清算と拉致問題の解決のためにも、北朝鮮政府との中断した国交交渉をただちに、無条件で再開しなければなりません。日本は北朝鮮の核開発中止、拉致問題の解決とともに、国交を樹立して、植民地支配の清算のための経済協力を実行すると説得することができます。
 韓国政府は南北対話のチャンネルのなかで核開発をやめるように北朝鮮にもとめ、南北経済協力を慎重にすすめています。日本もこのような韓国に協調して、北朝鮮を説得するように努力すべきです。このような努力を行わないで、北朝鮮に対する経済制裁を主張したり、有事立法など、軍事的体制を強化するような動きが日本で進んでいることが憂慮されます。そのような動きは、過去の植民地支配を正当化するような傾向とも結びついています。
 東北アジアはいま重大な岐路に立っています。北朝鮮を追いつめて、押しつぶす方向へ進むのか、北朝鮮を含めて、平和、非核、協力の東北アジア新時代の構築へ向うのかです。このたびの盧武鉉大統領の訪日、日韓首脳会談が両国首脳が平和的解決を求める意志を再確認し、東北アジアの新しい時代のための協力の第一歩を踏み出す機会となることを期待します。
 中国とロシアの役割への期待も大きいものがあります。われわれは中ロ首脳会談で北朝鮮の核問題に対する軍事的解決に反対であるという立場があらためて確認されたことを歓迎します。
 韓国人と日本人はかつて、韓国民主化運動の時期に緊密に連帯し協力してきました。そのときアメリカの市民も大きな支援を与えてくれました。いま韓国人と日本人は北朝鮮の核危機の解決のために、東北アジアの緊張緩和、平和協力の構築のために、新しい決意で共同の努力を開始します。そのために、日本人は日本の過去の歴史の反省を深め、歴史認識の共有にむけて真剣に努力します。このような韓国人と日本人の新たな協力に対してアメリカはじめ世界の市民のみなさまにも心からご支援をお願いいたします。世界の市民の運動が高まったにもかかわらず、イラク戦争はおこりました。朝鮮半島および東北アジアで悲劇をくりかえさせないためには、日韓をはじめとする世界の市民のさらに巨大な連帯の流れが必要です。

  1. 東北アジアでイラクの悲劇をくりかえしてはならない
  2. 北朝鮮政府は核兵器の開発計画を放棄すべきである
  3. アメリカ政府は北朝鮮政府を攻撃しないと表明すべきである
  4. 北朝鮮政府の核兵器問題を契機に東北アジアで緊張を高め、新兵器の開発、搬入などの軍備拡張を進める動きに反対する。
  5. 日本政府は日朝国交交渉をただちに再開し、北朝鮮政府に核開発中止を説得すべきである
  6. 日韓両政府は、東北アジアの平和非核・協力の新時代の構築のために提携して前進すべきである
  7. アメリカをはじめとする核保有国が核兵器を廃止するように訴える
  8. 世界の市民が朝鮮半島と東北アジアの平和と安全への願いを積極的に支援し、韓国と日本の市民の運動に参加してくれることを要望する
           2003年6月8日





日本側声明署名者(アイウエオ順)

  安達クニ子(東京日朝女性のつどい代表)
  荒井献(聖書学者)
  荒井信一(茨城大学名誉教授)
  新崎盛暉(沖縄平和市民連絡会共同代表)
  李順愛(富山国際大学助教授)
  飯沼二郎(京都大学名誉教授)
  五十嵐武士(東京大学教授)
  石川光庸(京都大学教授)
  石坂 啓(漫画家)
  石坂浩一 (立教大学講師)
  石田 雄(政治学研究者)
  出水 薫(九州大学教員)
  磯崎典世(学習院大学教員)
  今津 弘(ジャーナリスト)
  岩本正光(日朝協会事務局長)
  魚住 昭(フリーライター)
  内田雅敏(弁護士)
  内海愛子(恵泉女学園教授)
  海野福寿(明治大学名誉教授)
  梅林宏道(ピースデポ代表)
  江原 護(都市問題研究所)
  江口圭一(愛知大学名誉教授)
  遠藤洋一(福生市会議員)
  小川ルミ子(I女性会議事務局長)
  岡部伊都子(随筆家)
  岡本 厚(雑誌『世界』編集長)
  大沢真一郎(京都大学精華大学教授)
  大塩清之助(牧師)
  太田 修(仏教大学助教授)
  大畑京子(長岡京市会議員)
  小田 実(作家)
  小田川興(ジャーナリスト)
  大槻和子(西東京市市民)
  片岡和夫(全日本海員組合副組合長)
  加藤久美子(おおみや市民の会)
  加藤周一(評論家)
  加納実紀代(敬和学園大学特任教授)
  鎌田 慧(ルポライター)
  川崎洋子(鹿児島市ボランティア)
  河 明生(企業者史家)
  姜 尚中(東京大学教授)
  姜 在彦(花園大学客員教授)
  姜 徳相(滋賀県立大学名誉教授)
  木下順二(劇作家)
  金 敬得(弁護士)
  金時鐘 (詩人)
  金 石範(作家)
  櫛渕万里(ピースボート共同代表)
  栗原 彬(政治社会学者)
  権香淑(上智大学アジア文化研究所共同研究員)
  小中陽太郎(中部大学教授)
  小森陽一(東京大学教授)
  坂本洋子(コムネットさいたま)
  佐高 信(評論家)
  佐藤 久(翻訳家)
  重藤 都(杉並区民)
  清水澄子(前参議院議員)
  東海林勤(牧師)
  白井美喜子(I 女性会議・京都)
  白柳誠一(カトリック枢機卿)
  辛淑玉(人材育成コンサルタント)
  新屋英子(俳優)
  新藤 允(日朝国交正常化を求める市民連絡会議)
  末本雛子(日朝友好促進京都婦人会議)
  鈴木佑司(法政大学教授)
  添田包子(栃木県元市議)
  曽我昭子(東京日朝女性の集い)
  曽我千代子(加茂町会議員)
  宋栄淳(元カトリック正義と平和協議会韓国委員会)
  高崎宗司(津田塾大学教授)
  高橋武智(翻訳家、リュブリャナ大学客員教授)
  建部玲子(青森県元県議)
  田中俊明(滋賀県立大学助教授)
  田中 宏(龍谷大学教授)
  鄭甲洙(ワンコリアフェスティバル実行委員長)
  鶴園 裕(金沢大学教授)
  鶴見俊輔(哲学者)
  津和慶子(I女性会議議長)
  都相太(NPO法人三千里鉄道理事長)
  都丸泰江(三多摩日朝女性のつどい)
  中村輝子(立正大学客員教授)
  仲尾 宏(京都造形芸術大学名誉教授)
  中島竜美(ジャーナリスト・在韓被爆者問題市民会議)
  中塚 明(奈良女子大学名誉教授)
  中村政則(歴史家)
  中山弘正(明治学院大学教授)
  なだ・いなだ(自由人)
  灰谷健次郎(作家)
  朴 一(大阪市立大学教授)
  原 寿雄(ジャーナリスト)
  飛田雄一(神戸学生青年センター館長)
  比屋根照夫(琉球大学教授)
  平山トシ子(北海道朝鮮女性と連帯する会)
  深水正勝(カトリック正義と平和協議会運営委員)
  福山真劫(フォーラム平和・人権・環境事務局長)
  藤永 壮(大阪産業大学助教授)
  前田哲男(東京国際大学教授)
  三木睦子(全国発明婦人協会会長)
  水野直樹 (京都大学教授)
  宮田毬栄(元雑誌『海』編集長)
  明珍美紀(全日本新聞労連委員長)
  村井吉敬(上智大学教授)
  文 京洙(立命館大学教員)
  森善宣(佐賀大学助教授)
  八木晃介(花園大学教授)
  矢沢康祐(専修大学名誉教授)
  矢向代史子(日朝友好促進京都婦人会議)
  山口啓二(歴史研究者)
  山崎キヌ子(宮崎県音楽グループ)
  山崎美恵子(さいたま朝鮮女性と連帯する会)
  山田昭次(立教大学名誉教授)
  山村ちづえ(神戸会社役員)
  山室英男 (評論家)
  梁 石日(作家)
  尹健次(神奈川大学教員)
  吉岡達也(ピースボート共同代表)
  吉川勇一(市民の意見30の会)
  吉田悟郎(比較史・比較歴史教育研究会)
  吉田博徳(日朝協会代表理事)
  吉田康彦(大阪経済法科大学教授)
  吉松 繁(牧師)
  李 仁夏(在日大韓基督協会川崎教会名誉牧師)
  李 恢成(作家)
  和田春樹(歴史家)
                      以上  124人


韓国側声明参加者名簿(カナダ順)

  姜萬吉(尚志大総長)
  姜ソンホ(順天大教授)
  姜ジョング(東国大教授)
  高銀(詩人)
  高ジョンヒュ(浦項工大教授)
  権ヒョクテ(聖公会大教授)
  金哲(延世大教授)
  金ソンボ(忠北大教授)
  金泳鎬(慶北大教授)
  金ヨンテク(徳治初等学校教師、詩人)
  金潤洙(民族文化芸術人総連合理事長)
  金イッカン(明知大教授)
  金ジョンヒョン(文化連帯代表)
  金ジョニョン(漢南大教授)
  金芝河(詩人)
  金晋均(ソウル大名誉教授)
  金チャンボク(釜山大教授)
  金ハンジョン(韓国教員大教授)
  金フェギョ(クァンウン大教授)
  羅ヘクチップ(全国基督教正義平和実践協議会共同議長)
  南ジデ(ソウォン大教授)
  ノ・ギョンチェ(水原大教授)
  ノ・テドン(ソウル大教授)
  朴ソグン(全国民衆連帯常任執行委員長)
  朴ソンジュン(非暴力平和連帯常任理事)
  朴元淳(美しい財団常任理事)
  朴イルチュ(興士団会長)
  朴ジンスン(忠南大教授)
  朴炯圭(牧師、民主化運動記念事業会理事長)
  パン・ビョンリュン(外国語大教授)
  方ソングン(韓国プロデューサー連合会会長)
  白楽晴(市民放送理事長)
  白ドウン(韓国基督教教会協議会総務)
  白永瑞(延世大教授)
  法リョル(韓国仏教環境教育院理事長)
  徐ジュウォン(環境連合事務総長)
  徐仲錫(成均館大教授)
  成大慶(成均館大前教授)
  成へヨン(基督教社会問題研究院)
  ソン・ホチョル(民主化のための全国教授協議会常任議長)
  ソン・サンヨン(漢陽大碩座教授)
  辛珠伯(京都大研究員)
  シン・ハンニム(言論労組委員長)
  安聖基(演技者)
  梁ギルスン(ウォンジン緑色病院院長)
  梁ミョンス(梨花女子大教授)
  呉ヨノ(オーマイニュース代表)
  呉ヨンギョ(延世大教授)
  呉ジョンリョル(全国連合常任議長)
  呉忠一(6月サランバン代表)
  ユ・ス(浄土会議長、僧侶)
  尹ギョンノ(漢城大教授)
  李ギョンジュ(仁荷大教授)
  李萬烈(淑明女大教授)
  李富栄(全教組前委員長)
  李スホ(日本教科書をただす運動本部常任代表)
  李時載(カトリック大社会学科教授)
  李シンチョル(歴史問題研究所研究員)
  李オギョンスク(韓国女性団体連合共同代表)
  李ユンガップ(啓明大教授)
  李離和(歴史問題研究所前所長)
  李仁在(延世大教授)
  李ジャンヒ(平和統一市民連帯常任共同代表)
  李福ェ(版画家)
  李ヘハク(住民教会牧師)
  李ヒョンスク(平和をつくる女性会共同代表)
  李ヒョンモ(市民の新聞社長)
  チャン・ミフェ(明知大演劇映像科)
  チョン・グァンフン(全国民衆連帯常任代表)
  チョン・グンシク(全南大教授)
  チョン・サンモ(民主言論運動市民連合理事長職務代行)
  チョン・ヨンテ(カトリック大教授)
  チョン・ジガン(基督教書会社長)
  チョン・ジニョン(同盟情報大教授)
  チョ・スンドク(民主化運動実践家族協議会常任議長)
  ゙喜ヨン(聖公会大教授)
  チュ・ジョンファン(民画連理事長)
  チ・ヨンソン(ハンギョレ新聞評価委員)
  蔡サンシク(釜山大教授)
  チョン・フェ(実践仏教僧家会常任顧問)
  崔冽(環境運動連合共同代表)
  崔ガンシク(高麗大教授)
  崔ビョンモ(民主社会のための弁護士会議長)
  韓ソンスク(ソウル大教授)
  洪ソンヒョン(牧師)
  黄サンイク(教授労組委員長、ソウル大教授)
  黄ル暎(小説家)
  黄インソン(ハンギョレ統一文化財団事務総長)
  ヒョ・リム(実践仏教僧家会議長)



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